障がいがあっても、より良い人生を送れる社会に

妊娠に誰も気づけず 知的障害ある女性の乳児殺人、記者が感じた壁/朝日新聞

妊娠に誰も気づけず 知的障害ある女性の乳児殺人、記者が感じた壁


2023.01.20 朝日新聞デジタル版より

女性は地域で自立しているように見えて、孤立していた。

障害の有無にかかわらず、被告の責任に応じて裁くのが司法の前提だ。そのためにも、裁判官や裁判員は被告の障害を理解した上で裁くべきだ。
知的障害者には公平な司法手続きを受ける上での難しさがある。置かれた状況の理解や説明がうまくできず、取り調べの妥当性がわからない。自分が何を尋ねられていて、どう答えたら有利になるかの判断も難しい場合もある。裁判で過度に萎縮することもある。

そこで近年「情状弁護」という弁護方法が確立されてきた。取り調べの初期段階から弁護士やソーシャルワーカーが支援に入り、裁判では被告の障害や生い立ちといった背景を説明する。今後の処遇計画も示す。正確な情報を提示し、公平な判決につなげる。
ただ、福祉(更生支援)が司法(再犯防止)を代替すると障害者の長期的隔離につながりかねず、注意が必要だ。専門職も地域の人たちも工夫し、障害者の孤立を防ぐことが大切だ。

2000年代に知的障害者や高齢の受刑者が多くいる実態が明らかになり、累犯対策として出所後の福祉的支援が問題となった。そこで09年に調整機関として「地域生活定着支援センター」が全国に設置された。
捜査段階からの入口支援も広がりつつあるが課題は多い。英豪では供述に困難がある人への取り調べには第三者の立ち会いが必要とされている。日本では権利保障としての支援は確立されておらず、支援の手厚さの地域差も大きい

知的障害者に精神鑑定が行われることはまれだ。情状鑑定を認めるなど裁判所や検察官、弁護人が障害による社会的困難を理解して裁くことが重要だ。そのためにも社会一般の障害理解が広がる必要がある。

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